ブルガリア料理

古よりブルガリアの人々は四季を「生命の力」として捉えてきました。ブルガリアではどの季節にも四季の恵みがあふれています。冬は厳寒の中をたくましく生き抜く生命が潜み、春にはやわらかい暖かさにつつまれた生命の躍動に出会えるでしょう。この自然による恵みは、現在まで続くブルガリアのライフスタイルと料理に多大なる影響を与えています。羨ましいくらい贅沢ですが、ブルガリアの人々はいつも新鮮な旬のものを食しています。そして長い経験と受け継がれた伝統作法により、その季節に適した素材を選び調理します。例えば肉。春は羊、夏は鶏、冬は豚といった暗黙のルールが存在します(絶対ではありませんが)。なぜそうなのかと言うと、冬に生まれた羊が食べごろになるのは春。鶏は脂肪が少なく軽いので夏の料理に最適。豚はカロリーの多い肉なので、冬の寒さに耐える脂肪をつけるのに必要、といった具合です。ちなみに魚は9月から3月。これは春に孵化した魚が、秋になると美味しい食べ頃になるからです。野菜も果物も、すべての食材はブルガリアの豊かな大地に育まれ、素朴なおいしさと充分な栄養を食卓に運んでいます。そんなブルガリア料理を季節行事とともにご紹介いたします。

季節 季節行事や祝日 メニュー名
1月 聖アタナスの日 丸パンとはちみつ ・バニツァ(パイ)・ワイン
[説明]
1月4日。聖アタナスの日。
キリストの洗礼日
(St.Jordan's Day)
小麦の丸パン・ 小麦のケーキ
キャベツロール(ご飯入り)
※肉食禁止
[説明]
1月6日、聖書によるとこの日イエス・キリストは洗礼者ヨハネから洗礼を受けた。「イエスは洗礼を受けるとすぐ、水から上げられた。すると、見よ、天が開け、神の御霊(みたま)が鳩のように自分の上に舞い降りてくるのをご覧になった。」
この日、空を見て願い事をすれば、神様がそれを叶えてくれるという。この日はブルガリア正教の神父が十字架を川・池・海などに投げ、それを求め若い男性が水中に果敢に飛び込む。獲得した男性はその年の英雄となる。
洗礼者ヨハネの日
(St.John's Day)
豆・ドライフルーツ・チーズパイ
ドライサラミ・焼き豚肉・ 豚肉キャベツの料理
[説明]
1月7日。洗礼者ヨハネの日。イエス・キリストに洗礼を行なった聖人として知られる。
2月 懺悔の日 バニツァ(パイ )
[説明]
毎年、イースターにより日が変わる。何気なく行ってしまった罪悪感をともなう小さな出来事に対し、若い人が年配者に許しを請う日。この日からイースターまでの期間、肉・チーズ・卵・バター等の生命から作られた食材を口にしてはいけなくなる。そのため、この日は“最後の晩餐”さながらの豪華な料理が振舞われる。
初春のお祝い
(St. Trifon's Day)
ケシケック (茹でた小麦)
[説明]
2月14日。初春のお祝い。ワインを作っている地域で祭りが開催される。神父とともに葡萄畑で祈り、葡萄の枝を切り、前年に作られたワインを枝の切り口にかける。今年もまたいい葡萄になるように、と。そして新しい一年の農作業が始まる。切った枝は持ち帰り、幸運のお守りにする。
3月 ババ・マルタ 豆料理
[説明]
3月1日。家族や親しい人に“マルテニッツァ”という赤と白の糸で作られた腕輪や人形を贈り、もらった人は身に着ける。この時季、町ゆく人の袖口から赤と白の糸が見え隠れする。春を告げるコウノトリを見かけたら、願いを込めて花の咲く木にマルテニッツァを結ぶ。(石の下に置く事もある)
イースター(復活祭) コズナック
※地方によって形、味、飾りが異なる
[説明]
3〜5月のいずれかの日曜日に行われる。ブルガリア正教において最も大事な日であるイースター(復活祭)は、イエス・キリストが処刑された後、生き返ったことに由来している。この日の主役は“イースター・エッグ”。ブルガリアのイースター・エッグが基本的に赤なのは、キリストが流した血を意味しているからだ。また、この日のためのケーキ“コズナック”があり、素朴な味がなつかしさを感じさせる。
5月 聖ゲオルギの日
(St. George's Day)
ラムバーベキュー・ ミルクご飯
[説明]
5月6日。イースターの後にある春の一番大きな祭日。聖ゲオルギは羊飼いと家畜の守護聖人なので、聖ゲオルギにこの年に生まれたオスの羊を捧げものにする。祭りの中心はラムのバーベキュー。この日から放牧が始まり、冬の間できなかった乳絞りも再開されるため、この日はヨーグルトが必ず食卓にのぼる。
6月 聖エニョフの日(夏至)
(Midsummer Day)
ブドウの葉のライスロール
[説明]
6月24日。洗礼者ヨハネの誕生日であり、一年で一番昼が長い日。若者の祭りで、青年たちは歌を競い合い、勝利者が若い女性からリングをもらう。

聖ペテロの日
(St.Peter's Day)

鶏肉とキャベツの料理
[説明]
6月29日。聖ペテロの日。聖ペテロはキリストの弟子筆頭といわれる人物。6月末頃に鶏は食べごろを迎え、この日から鶏肉が夏の食材として多用されるようになる。
7月 聖エリヤの日
(St.Elija's Day)
タラトール牛肉と野菜鍋
[説明]
7月15.16.17日。預言者エリヤの日。旧約聖書の中で、邪神バアルの信者と戦い、勝利を収めている。
8月 キリスト変容日
(The Transiguration Day)
焼き魚
[説明]
8月8日。イエス・キリスト変容の日。イエスは、山上で旧約聖書のモーゼ、預言者エリヤと共に、彼がエルサレムで行なう最後の試練について話し合った。その様子を見ていた弟子たちがイエスの顔・姿・服が変化したのを見ている。
聖母マリアの日
(Virgin Mary's Day)
ラムとミルク
[説明]
8月15日。聖母マリアの日。若い女性が聖母マリアに贈り物をする。特に選ばれるのが聖母マリアのイコン。
9月 キリスト国教記念日
(Baptising Day)
卵とフェタチーズのパプリカ詰め
[説明]
9月14日。864年、この日ブルガリア王国はキリスト教を国教とした。肉無し料理がメイン。
11月

聖アンドレの日
(St. Andrew's Day)

豆と米の料理
[説明]
11月30日。聖アンドレの日。 聖アンドレはキリストの12使徒の1人。伝道と医療活動を行い、ローマで殉教した。
12月

聖ニコラの日
(St. Nichola's Day)

鯉の詰めもの
[説明]
12月12日。聖ニコラの日。聖ニコラは漁師や船にかかわるものたちの守護聖人。なのでこの日は魚料理を食べる。また、聖ニコラはサンタクロースのモデルになった人物。

クリスマス・イヴ
(Christmas Eve)

カボチャパイ ・キャベツロール
[説明]
12月24日。クリスマス・イヴ。イエス・キリストの生誕日は冬の最大の吉事。クリスマス・イヴには家族全員が集まり、野菜や穀物で彩られた食卓を囲む。基本は肉無し料理。
肉料理
ムサカ 豚肉キャベツの料理 鶏肉とキャベツの料理 ラムとミルク
牛肉と野菜鍋 カヴァルマ(ナ・サジャック)
魚料理
焼き魚 鯉の詰め物    
パン・パイ・米・小麦料理
バニツァ(パイ) ホウレンソウのバニツァ 丸パンとはちみつ ケシケック
ブドウの葉のライスロール 豆と米の料理    
サラダ・野菜・豆料理
ナスとフェタチーズムサカ ドライタラトール ミシュマシュ 豆料理
トマトのヨーグルトサラダ詰め パプリカの詰め物ヨーグルトソース添え
焼きナスのヨーグルト添え ショップスカ・サラダ(ショップ地方のサラダ)
卵とフェタチーズのパプリカ詰め  
スープ
タラトール      
デザート
はちみつとクルミの焼きリンゴ ヨーグルトデザート
コズナック ミルクご飯 カボチャパイ  
その他
ヨーグルトソース      
 
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