NHKきょうの料理
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Story magazine_2006_06
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ローズローション
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Page 238


40歳からの美のレッスン

STORY・ストーリー・7「July 2006」



伊藤緋紗子 HISAKO ITO
横浜生まれ上智大学外国語学部、同大学院仏文科終了。
在学中、仏政府給付留学生として渡仏。現在は翻訳、エッセイの執筆、講演等で活躍。著書・訳書に「パリが教えてくれること」、「フランス上流階級BCBG」(光文社)、「ベアトリス夫人の美しい生きかた」(光文社)、「心の翼を休めて」(河出書房新社)ほか多数。最新刊は「Mamanが教えてくれたこと」(KKベストセラーズ)。


イキイキと息を吸っていますか? 38 最終回(Lesson)

息を吸って吐くことは、生きるために不可欠なことです。無意識にしていることではありますが、もっと意識を集中させて、丁寧に吸って吐くことで、体はより活性化し、健康や美しさに繋がることにもなるのです。
私はそのことを、ヨガをするようになってから知りました。ヨガのポーズのひとつに、両脚を肩幅ほど開いて立ち、爪先を少し内側にして少し上半身を前屈みにしながら、一、二、三、で肺の中の空気をすべて出すというポーズがあります。このとき、勢いよく肺の中の空気を出し切らなくてはいけません。そして、出し切れば、その反動として新しい空気が気管を通じて、肺に入ってくるわけです。そして、体中の隅々まで酸素が送られてゆくことで、細胞もいきいきとしてくるのです。
ヨガの先生に教わったことですが、息を吸うとき緊張感が走り、反対に息を吐くときに、体も精神もリラックスするそうです。ヨガでは、この吸う≠ニ吐く≠ひとつひとつ体の動きに合わせて行うのが基本です。「緊張」と「リラックス」を交互にすることで、肉体と精神に好影響を及ぼし活性化を図ることを目的にしているのです。
また、水泳をしているときに、いくらクロールに挑戦しても一向に上手にならないのは呼吸法の難しさにあったということにも気がつきました。
呼吸法だけではなく、体を活性化させてくれる呼吸には、美しい空気が必要です。ですが、現代において都会などでは、きれいな空気の代わりにゴミで汚れた空気に満ちています。家の中でさえも、家ダニやハウスダストが浮遊している状態です。通常、人体についている空気清浄器の役目をする気道の内側にある綿毛が、そうしたゴミを排除します。ですが最近では、この綿毛でキャッチしきれない物質が出てきているため、シックハウスに冒される人が増えてきているのです。私の周囲にも、このシックハウスに苦しんで、せっかく引っ越した新しいマンションをすぐに出て行ってしまった方もいらっしゃいます。
そこで、我が家では空気清浄器を設置しましたが、そのほかに、朝起きたときに窓を開け、外気を入れ常に空気を入れ換えることを心がけています。
それからもうひとつ。ビタミンAを摂取することで、気道でゴミを排除する粘膜がつくられるのです。例えば、それはベータカロチンを含む野菜(にんじん、パセリ、ブロッコリー、チンゲンサイ)やレバーや牛乳、卵を摂取することで、ゴミの体内への侵入を防ぐと同時に、目や肌も美しくなれるのですから一石二鳥でしょう。ですが、レバーなど野菜以外のビタミンAは、過度に摂取すると吐き気や頭痛をもたらし、マイナスの結果に転じてしまいます。あくまで適量にとどめておきましょう。
ところで、これまでに夜、仰向けに寝て苦しくなった経験はありませんか?私は数度体験したことがありました。いつも、しばらくの間もがいていると直るので別段気にしていませんでしたが、この現象について、最近読んだ「病気にならない生き方」(新谷弘美著)の中に書かれてありました。
それによると、この現象は「睡眠時無呼吸症候群」という名がついているようで、これは日々の習慣を少し改めるだけで、治るのだそうです。この現象が起こる人は「気道狭搾」が著しい人で、太った人は特に危険ということでした。
《仰向け状態で寝ていると誰でも舌の根もと(舌根)が垂れ下がり、気道が狭くなります。息が止まると苦しいので、本人には自覚はなくても、夜中に何度も目を覚まします。結果的に熟睡できず、昼間に強い眠気を生じたり、集中力が低下したりしてしまうのです。》(本文より抜粋)
私の場合は、明らかに気道の閉塞による症状のようですが、それは睡眠時間の4〜5時間前から、何も食べないことで簡単に治るのだそうです。私は普段、太らないようにするため、食事は少なくとも夕方6時〜7時までの間にしています。正確に思い出すことはできませんが、そう言われてみれば、夜に呼吸がしにくくなったのは何らかの理由で食事が遅かった日だったと思うのです。
でも、夜にどうしてもお腹がすいて眠れない日だってあります。そんなとき、私はエンザイムを含んだフレッシュな果物を少し食べるようにしています。そういえば、私の母は夜にリンゴやオレンジを出してくれました。あの習慣は確かに理にかなっていたのです。
加えて、私は枕の代わりにバスタオルを四つ折に畳んで頭の下に敷くという習慣をずっと続けてきました。これは元はといえば、首のシワ予防でしたが、寝た姿勢で気道が狭くなり、苦しくならないためでもあります。
それから、深く呼吸できる環境に持っていくことも大切でしょう。私は原稿書きの仕事が続いて、緊張やストレスが溜まってしまったとき、呼吸がうまくできず睡眠も浅くなってしまうことがあります。明らかに皮膚の細胞に酸素がゆき渡らず、毛穴が乱れ、キメが整っていないと感じるのです。そんなときは、行きつけのエステで体をリラックスさせ、思い切り深呼吸をするようにしています。そうすると、肌が息を吹き返したように落ち着いた状態になってくれるのです。
もしくは時間があるならば、長崎の別荘まで足を延ばします。東京のど真ん中から抜け出し、たまには森林浴をしたり、海辺を散歩したりして、深呼吸することを忘れないようにしなくてはいけません。
さらに手近な手段としては、バラの水(ローズウォーター)を顔にスプレーすることです。美しいバラの香りを嗅いだときのように、深く息を吸えるのでおすすめです。
こうして考えると、毎日無意識にしている呼吸にしても、正しく呼吸をするために常に体調を整えておかなければいけないということを考えさせられます。
人間は、呼吸をしていれば生きていることになります。「息」が繋がっていることが生命を保つことなので、イキ(息、生き)という同じ発音の言葉になったのかもしれません。
普段は全く意識しないで呼吸をしているわけですが、何かのきっかけで、その大切さに改めて気づくのです。
美しく生きること。それは上手に息を吸ったり吐いたりすることでもあるのです。

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